<side 皐月>


脳外科医局に衝撃が走る。

それは珍しく高城先生と私と宗佑で、これから食堂に行こうとしていた矢先。
高城先生から出た発言が発端だった。

それが、また古株の先生が辞めるというのだ。


「えっ、吉永先生も辞めちゃうんですか?」

「もう年齢的に急性期きついってな、そう言われたらもう何も言えないよなー。ここで倒れられても困るし」

「だって先月、橋本先生が療養型に移ったばかりなのにっ」

「橋本先生も似た理由だよ、急性期きついってな」

すると高城先生が思い立ったように私達の顔を見て釘を刺す。

「お前らも行きたいなんて言うなよっ。療養型なんて行かせないからな、まだ急性期でバリバリ働いてもらわんと」

ふんっと、そう言い切ると思わず私達は顔を見合わせて笑ってしまう。

「言いませんよ、まだまだ学ばなきゃいけないことたくさんありますから」



次々と辞めていく脳外科の古株先生達。
その穴を埋めていくの当然残った私達で……。

私達はひぃひぃ言いながらもなんとかやっていたが、部長の高城先生が一番負担が大きいことは誰もが知っていた。そして、目に見えてやつれていた。

きっとこの人のことだろうから、家で酒ばかり飲んでどうせろくなもの食ってないんだろうな……。


食堂でアジフライに食いつく彼に尋ねる。


「……部長、ご飯ちゃんと食べてます?」

「食べてるよ」

「……」

「何、その疑うような目」

「今度、ご飯作りに行ってもいいですか?」

「……は?」


まるで桐山の前で何を言い出すんだというように少し慌てる彼。


「別に深い意味はありませんよ、部下として上司の食生活を心配してるだけですよ」

「そりゃあ、どうも」

「だから職場の上司を心配して行くだけですから別に問題ありませんよね?高城先生」

そう詰め寄るも高城先生は顔を引きつらせて、いやーっと頭をかいている。