酸素の薄い中、止まらない涙にしゃくりあげながら泣くのは苦しい。

どうしてこんなに弱くなってしまったのだろうか、薬で誤魔化していた分薬がないとこんなになってしまうなんて。その代償の大きさに驚く。

それでも薬が欲しいと思ってしまう、この不安から解放されたい……。

ぎゅっと目を瞑って遠慮気味に鼻をすすると、突然布団を開けられひんやりした空気が入ってきた。
目を開けるとそこには、黒瀬先生。


「いやいや、聞こえるから」

呆れたようにそう言われ、突然のことに放心しながら今一度鼻を啜って涙を拭った。


「出ておいで、なんで君はそんなに苦しんでるの?」


やれやれというような顔をしながら、優しい声色で私の手引っ張って布団から出した。
そのままリビングで、テーブルを挟んでお互い向き合いながらソファーに座る。

コトっと静かにテーブルの上に置かれたのは、湯気の出たマグカップ。
牛乳を温めてくれたようだった。


「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「で、どうしたの?薬は前から飲んでたの?」

「……いや、ここ最近です」

「宗佑に振られたから?安生先生に際どいセクハラでもされた?」

直球過ぎる質問に、私はびっくしりして彼を見た。

「正直厄介ごとは面倒し、あんたの事情に首突っ込む気なんてさらさらなかったけど。ここまで世話したら放っとけないんだよ、だから容赦なくいくよ」

「……っ」

「まぁ、全部成り行きだけどさ。色々あったんでしょ?話してよ、何があったか」


そう言う彼に私は思わず口を噤んだ。

誰にも言いたくなかった。
誰にも頼りたくなかった。

でも結局私は弱くて、薬を飲み過ぎて運ばちゃうし。
こうやって誰かに助けてもらわないと、もうどうしようもないところまできてる。



「……あ、あの、本当はもう限界なんです。もう触られたくないんです。でも、仕事のことを考えるとどうしても断れなくて」


そう言いながら唇が震えた、体が崩れ落ちないよう支えるようにぎゅっと腕を組んだ。