静かな車内に勢いを増す雨の音と、忙しく動くウインカーの音が際立っていた。
予想よりも早く、雨は雪に変わっていった。
道路にも、白い雪が降り積もり始める。
さっさとこいつ送り届けて帰んねぇとな……。
「で、家どこ?」
「えっと、上河です……」
「え?」
思わず聞き返してしまう。
上河って言ったら、ここから車で30分、いやこの雪だったら1時間弱はかかる。
しかもあっちの方は、こっちよりも雪深いところだ。
ここでこれだけ降っていたら、とっくに本降りになっているだろう。
……だめだな、このタイヤじゃそんなとこまで送ってってやれない。
近くのホテルに泊めさせるにも、同じような状況に陥ってる奴は俺達だけじゃないだろう。
しかももうこの時間帯だったら、どこも埋まっていそうだ。
さて、どうしたものか……。
「どうしようもねぇな……」
「え……?」
そう漏らした俺の言葉に、横から不安げな視線を感じた。
「もう俺んち泊まって行け」
「えぇ……っ!?」
「しょうがないだろ、この雪じゃもうお前んとこまで送ってやれないんだよ。これからスタッドレス履き替えるなんて絶対ごめんだし」
「あの、そんな迷惑かけれないです、24時間やってるファミレスかカラオケにでも降ろしてってください」
「あぁ?1人でオールさせられるかっての」
いや、前みたいな近寄るなオーラをバリバリ出してくれてたならまだいいけど。
でも今のこいつだったら絶対に変な輩に絡まれる。
顔は人形と言われるだけあって、どこぞのアイドルよか恐ろしく可愛いもんだからな。
まぁ、俺のタイプじゃないけど。
「それか、ここら辺に泊まらせてくれそうな友達いるなら、そいつんちまで送ってくけど?」
「……」
更に眉間の溝を深くして黙りこくった彼女をよそに、自分の家へ向かう。