<side 未結>
昔、子どもの頃そうちゃんちで見た人形劇のビデオ。
それは、本当の母親とその母親そっくりに扮した魔女がまだ物心つかない子どもを取り合う童話。
小さい頃、親たちは私達を静かにさせるため色んなアニメやら人形劇のビデオを見せていた。
私はその中でもその人形劇が心の中で深く残っている。
今でも、ふと思い出しては考えるのだ。
母親と魔女の気持ちを。
何が何でも子どもを手に入れたい魔女、大事な子どもを奪われまいと必死な母親。
しかし、魔女は巧みに子どもと周囲の人々を騙し、自分の味方につけてしまう。
それでも母親は子どもの傍から離れず、魔女かた身を挺して守ろうとする。
最後は魔女が子どもを力づくで攫おうと子どもを引っ張った、もちろん母親は子どもを守ろうとぎゅっと掴む。
両者一歩も引かずに引っ張り合い、やがて双方から引っ張られ痛くて泣き叫び始める子ども。
その姿に思わず手を離す母親。
してやったりとその隙に魔女が子どもを奪い去ろうとする中、やっと子どもが本物の母親に気付くのだ。
この童話は、きっと母親の愛がテーマ。
そして子どもが本当の母親の愛に気付いたところで、めでたしめでたしとなる訳だけど。
幼い頃は素直に感動し目を潤ませていたが、今大人になってよく考えてみたらどうしても母親の行動を疑問を抱いてしまうのだ。
母親は手を離すべきだったのだろうか。
物語の中では、その行動で子どもが本物の母親だと気付く大事な場面だ。
だけど、本当に離すべきだったのだろうか。
子どもが泣き叫ぼうが、魔女に奪われたくなかったら何が何でも離さないもんじゃないだろうか。
私はきっと子どもを離さないだろう。
大事な我が子を、本当に守りたかったら絶対に手を離すべきじゃないと思う。
力ずくでも、子どもがいくら泣き叫ぼうが何が何でも掴んでいるべきだった。
そんなこと思う私は酷い人間なのだろうか……?
ちらっと隣にいる彼の横顔を見やる。
大丈夫、きっと彼も私と同じ答えを言う。
何が正しいのか、何が間違っているのか。
もうそんなのどうでもいい。
誰に何を言われようと、2人が同じ答えに辿り着けばいいじゃない。