その体に触れたいと、その唇にキスしたいと思い始めたのはいつからだったろうか。しかしそれはただの幼馴染の俺にとっては所詮叶わぬ夢。

絶対に犯してはならない禁忌だった。
触れてしまえば俺達の今までの関係は全てなかったものになってしまう。

未結の笑顔を傍らで見られなくなる位なら、そんな汚い欲望には蓋をしようと思った。

だけど、もう限界だ。
やっぱり、あいつに全部奪われたと思うと悔しくてたまらないんだよ。



『……なんか、今日のそうちゃん変』

『そう?いつもと変わんねぇよ』

『だ、だって前はこんな話しなかったじゃん』

『いや?』

『……うん、やだ。あんましたくない』

『なんで、別にいいじゃん。どうだったの?気持ちよかった?』

きわどい質問を続ける俺に、未結の眉間の皺がどんどん深くなっていった。


『……なんか、そうちゃんじゃないみたい』

ぼそっと漏らした一言。

『何それ』


”そうちゃんじゃないみたい”


……そうだな、お前が昔からよく知るそうちゃんはもういないのかもしれない。



『なぁ、俺にもさせてよ』



気付けばとんでもないことを口走っていた。未結は大きく目を見開いて、あわあわと鯉のように口を動かした。

『え?聞き間違いだよね。もしや幻聴?』

信じられないのか、それとも俺の口から出たセリフだと信じたくないのか。
この期に及んで、え?え?とおどけたように言う未結。

俺が腹に抱えてるものを知らずに、随分と余裕なもんだ。


『聞き間違えじゃねぇよ』

俺はそう言って未結の手を掴んで、床に押し倒した。

『え、うそ、うそでしょ…っ?そうちゃん、冗談だよね…?』

俺に組み敷かれながら、不安げに俺に聞いてくる。
そんな今にも癇癪を起こして泣き出しそうな未結に、冷たく告げた。


『本気だよ』

そう言って白い首筋に唇を落とした。
白く柔らかい肌、跡を残したら康介は怒るかな。

まぁ、こんなレイプまがいなことをしておいて、そんなキスマークなんて気にする必要もないか。