「うわ、焦がしちゃった……」
やっぱり、豆腐の水切りが甘かったかな。いや、ダイエットって言って豆腐の割合を増やし過ぎたのが問題だったかも。ま、ソースかけちゃえば分かんないよね。
ぶつぶつ独り言を垂れ流しにしている未結に、横やりを入れる。
「どれも違うだろ。一番の原因は、お前がハンバーグを焼いてる間ドラマに夢中になってたからだろうが」
「だって、犯人分かるとこだったんだもん。大丈夫、そうちゃんのは焦がさないようにするから」
「はいはい」
ふと、こめかみ辺りを抑えて顔をしかめる未結に気付き、心配して尋ねる。
「なんだ、頭痛いのか?」
それに頭を振って否定する。
「生理前にねよく痛くなるの。えっと、生理前症候群って言うんだっけ?」
「こっち来て」
「え?これからそうちゃんのハンバーグ焼くんだよ?」
「いいから、ここ座って」
そう言って半ば強引に、自分の座るソファーに座らせた。
何事かと俺の方を向いてちょこんと座る未結の手を取る。
「手痺れたりしないか?」
それにううんと答える未結。
俺は、未結の小さな手を握って指示する。
「力いっぱい俺の手握って」
「え?」
「検査だよ」
すると、んーっと声を漏らしながらぎゅっと力の限り握ってきた。
「もう、大げさだな。そうちゃんは」
「いいか頭の中はお前よりずっとデリケートで繊細なんだよ。気付かないうちに進行している場合もある」
「そうだね。でも、ちょっと手術してもらった方が私のおっちょこちょいも、ちょっとは良くなったりして」
てへへ、と笑う彼女。
冗談で言っているつもりだろうが、今の俺には通じない。
「……確かに、前より忘れっぽいよな」
「やめてよ、冗談だから。私のおっちょこちょいは昔からでしょう?」
今日のことがあったから、さすがに気にし過ぎだ。
それに、もし症状が現れても、ほとんど毎日一緒にいるのだ、見過ごすことはないだろう。