その日は、外来だった。
いつも通り診察をしていると、症状が重いと急遽順序を繰り越して診察室にやって来た女性の患者がいた。
回らない口で、よろしくお願いします、と頭を下げるその患者。
見たところ30代位だろうと思っていたら、カルテを見ると42才と記載されていた。
上手く話せないその女性の変わりに、看護師が発症までの経緯と主症状を説明する。
「二か月前にスキーで頭部を打撲、数日前から頭痛と右手の痺れが出現。現在右麻痺と構音障害が出ています」
早速パソコン上のCT画像を見ると、過去の打撲により血腫が広がっていた。
「大分、圧迫されてますね。ここに黒く映っているものは血の塊で、血腫と呼んでいるものです」
画像の黒い部分を指しながら、患者へ説明する。
「打撲により頭部を損傷したことで、じわじわと時間をかけて血が溜まってきたようです。そして、この血腫が悪さをし、手の痺れや喋りにくさといった症状を引き起こしています」
「な、治るんでしょうか……?」
「手術でこの血腫を取り除かない限り改善しません。突然ですが、入院して明日血腫を除去する手術をしましょう」
その話を聞いて複雑そうな顔をする女性。
治ると聞いて嬉しいのだろうが、突然手術と言われ戸惑っているようにも見えた。
しかし、これ以上悪化する前に早く手術した方がいい。
その後、承諾した女性に手術同意書と万が一の為の輸血同意書のサインをもらい、病棟へ送った。