こっちは真剣なのに、彼にまた顔を抱き寄せられキスをされた。
「ん……っ」
さっきよりも長めで深いキス。
こんなんじゃほだされないんだから。
「……もう、言ってくれないから不安になるのに」
「悪かった、必死になった顔があんまり可愛いもんだから。指輪でも何でもお前が欲しがる物はなんでもあげるよ」
そう言われ、自然と笑みが零れる。
つい嬉しくて、先生の体にぎゅっと抱きついた。
「……あー、だめだこれ」
「え?」
呟くような彼の独り言。
次の瞬間にはもう形勢逆転されていた。
「え、えっ、嘘でしょ、ちょっと待って下さい。まさか、こんな明るいところでするつもりですか?」
「半分、生理現象だが、残りの半分はお前の責任だからな」
「責任?私が何したって言うんですか」
「顔見れた方がいいんだろ?今なら隅々まで嫌って言う程見れるぜ」
「でもっ、これは、さすがに恥ずかしいです」
「大丈夫、そんな余裕奪ってやるから」
にこっと笑う彼に、焦る私。
「ぜ、全然大丈夫じゃない……!」
私の気持ちを無視して勝手に始まろうとしている行為。
しかし、最初は拒絶はすれども、一度始まってしまえばもう彼には逆らえない。
主導権はいつだって彼にある。
……もしかしたら、また泣かされることになるかもしれない。
元々気の多い彼だ、これから他の女の子に目移りすることだってあるかも。
私は先生に甘やかされて少しワガママになった。
そして欲張りにも、傲慢にもなった。
だから、もし他の女の子に心が揺らぐことがあっても、簡単に諦めてなんてあげない。
きっと、何度でも奪い返して見せる。
いつか、この左手の薬指に指輪がはめられるまで。