彼と触れ合う度、頭の中に理津子さんのことが浮かぶ。


……本当にこの人を手に入れてしまっていいのだろうか。

部下として、好きという気持ちをひた隠しにしずっと付き従って行く覚悟だったのに。

こんな幸せを手に入れてしまっていいのだろうか。


部長は不安がる私に、大丈夫、と微笑んでいてくれるような気がした。

私もいつまでも、彼を前に思い悩んではいけない。

彼には、私のこんな気持ちとは比じゃない位の葛藤があったはずだろうから。


元はといえば私が始めたことだ。

あの日、理津子さんの前で覚悟を決めたじゃないか。





しかし、いざベッドに入ってみると彼のギャップに驚かされた。


絶対淡白だろうと思っていたのに……、

こんな、ねちっこいセックスをするとは思わなかった。


「部長……っ」

「ここでは部長じゃないだろう?」

「……ゆ、侑吾さんっ、もういいです」

「どうして、気持ちいいんだろう?」

「いいですけど……っ」


もうそこは部長を受け入れる準備はできている。
それどころか、甘い刺激を与え続けられて焦れて仕方がない。
決定的な強い刺激が欲しい。


「君のそんな顔、滅多に見れるもんじゃないからな。もう少し楽しませろ」

なのにそう言ってお預けを食らわされる。
これじゃ、前戯で果ててしまう。


「……も、もう我慢できないんです」


顔を腕で隠しながら小さな声で限界を告げる。

私の髪をかき分け、優しく腕を取られるとキスをされた。

ふと唇が離れ、微笑む部長と余裕のない私の視線が交差する。


ゆっくり彼の熱が中に入って来て、一瞬顔をしかめた。

最初は私を労わるような優しい動きだったのに、彼の荒くなる吐息と比例して情動的なものへと変わっていく。

たまらず先生の名前を呼んで、全身を震わせて昇る私。

それに気付いた先生が少し、動きを止めて私が落ち着くのを待ってくれる。


「まだ、できるかい?」

はぁ、はぁ、と荒い息を整えながら、私は声も出せずに頷いた。

熱を宿したままの部長のものがまた動き出す。