「心配しなくても、お前みたいに傷つけたりしねぇよ」
「黒瀬先輩ですよ?信じられる訳ないじゃないですか」
「そりゃそうだな」
ははは、と笑う黒瀬に冗談じゃないと怒る宗祐。
「ふざけないでください。本気で栞と付き合うつもりがないなら、彼女に関わらないでください」
「大丈夫だって。まだ付き合ってる訳じゃないけど、彼女のことはちゃんと本気だよ」
彼の手癖の悪さを知る私達は、揃って疑うような目で見つめた。
だって、こいつが1人の女の子と真面目に付き合うなんて、とても考えられない。
睨む宗祐に、まるで他人事かのような黒瀬。
そんな2人の話を静かに聞いていた部長が口を開いた。
「まぁまぁ、桐山が心配するのも分かるけどさ」
「相手が黒瀬ですからね」
うんうんと頷きながら、宗祐の心中を察しそう言う。
「うちにもそのMRの子よく来てたから知ってるけど、男に遊ばれるような子には思えなかったけどな。それは桐山も知っているだろ」
「そうですけど……」
「まぁそれにしてもだ、黒瀬と関わるかどうか決めるのはその子だ。振られた側としちゃ君に心配されてもいい迷惑だよ」
部長には珍しくきつめな言葉に、ちょっとびっくりする。
宗祐は、自分でもどこかでそう思っていたのか神妙な面持ちをしていた。
「そうそう、たまには脳外科部長もビシッと言うんですね」
部長の言葉に、相槌を打つ黒瀬。
褒めているつもりなんだろうが、たまにはという言葉がひっかかったのか、素直に喜べず顔を引きつらせる部長。
「良かった、君が脳外じゃなくて。君が部下だったら胃に穴が開きそうだよ」
「なんでですか、俺ちょっと脳外興味あるんですけど」
「勘弁してくれよー」