どこかで一線を引いたような関係。

今までは私の方から距離を取っていた。
それを強引に踏み越えて近づいて来たくせに、あと少しってところで、今度は彼からはっきりとした線引きをされる。


友達以上、恋人未満な宙ぶらりんな関係。


……本当に謎な人。



一緒に住み始めて何度目かの夜。

いつも彼に背を向けて寝ていたが、彼の方へ顔を向けてみた。


「何、どうしたの?」

「ず、ずっと、同じ向きで寝るの疲れるから」

「そりゃそうだな」


ちらっと彼を見上げると、彼はもう目を瞑っていた。


「おやすみ」


そう言って背中をポンポンされる。


今度は私から歩み寄ろうと思って、せっかく勇気を出して振り返ってみたのに……っ。


以前、大事な子だから手を出さないって言ってくれていたのを思い出す。


本当にそうかな……?
手の早そうな彼がここまで我慢できる?

手を出さないのは単に私に魅力がないだけなんじゃ……、あんなブラジャーも見られてることだし。



だめだめ、そうやってすぐに人を疑うの。

以前、女性との別れ際を見て、取捨選択が残酷なまでにはっきりしていた彼。

私にここまでしてくれる義理なんてないし、飽きたらとっくに捨てられていることだろう。


……彼にここまでしてもらって私は返せるものが何一つない。

だから体を求められても、私は受け入れるつもりでいた。

自分でも言うのも何だが律儀な私には、何も返せないこの状況の方がもどかしくてしょうがなかった。