なんて、よくも考えずに答えてしまったことを後悔することになるとは……。

そうして車で連れてこられた先は、なんと格式高そうな料亭だったのだ。


……なんで?

どうしてそんな気軽なノリでこんな料亭に来れちゃうんだろう。


店構えからすでに怖気づく私。


「あ、あのっ。こういうお店に来るなら、あらかじめ言ってもらわないと……っ」

「いや、うまい刺身と天ぷらが食べたくなってさ。そにに、お前お任せしますって言ったろうが」

「そ、そうですけど、こんな普段着で」


自分の服を見る。

黒いコートの中は白いニット、下は細身のスキニージーンズ、靴はグレーのパンプスを履いていた。
いつもと変わらないモノクロな服。

というか、こういうシンプルな服しか持っていないから、着飾るなんてこともできないけど。

でもそれでも、少しはTPOを考えた、せめてジーンズじゃない格好で……。


ぼそぼそ小言を漏らして立ち竦んでいたら、強引に手を引かれた。


「どうせ、個室だから誰も見てないって。ほら行くよ」


着物の似合う上品な女将さんに部屋に通され、対面式に座る。

窓の外から和風庭園が覗け、時折遠くでカーンとししおどしの音が鳴っていた。

こんなところに来るのは初めてで、どうも落ち着かない。

席代だけで、一体いくらするんだろうか。

そして運ばれてきた料理。

竹の器に綺麗に盛り付けられた天ぷらに塩をふりかけ、その中から舞茸を一口。


「どうおいしい?」

「お、おいしいです」


正直、元々胃腸が弱くて油物を食べるとすぐ胃がもたれていたんだけど、これならすんなり食べれそう。



「仕事を辞めることに負い目を感じず、前向きに転職する方法何かないかな」

「え?」