「それ病棟でCV入れられるんですか」

後輩が心配そうに尋ねる。


「さぁな他の内科の連中がやってるんじゃないか。ドレーン挿入なんてもっと無理だろ」


はははっと笑い声をあげて嘲笑う部長。
自分だって人のこと言えないくせに、ベテランか俺がいないと簡単なOPEにさえつかないのによく言う。


「だから、今じゃ外来診察が中心だよ。なんだ、お前も少しは先輩Drに興味があるのか!ちなみに私の元々の専攻はだなっ」

「あ、もう結構です」


何を勘違いしたのか息を巻いて自分語りし始めた部長をぶった切るように、淡々と告げた。


「ぶ、部長っ。抑えて、抑えて」


すると頭から湯気が見えそうな位憤慨する部長。そんな部長を、後輩がそう言って宥めた。



「でも急に安生先生がどうかしたんですか?」

「あー、その人さ辞めさせたいんだよね」

あっさり言ってのけた俺に、後輩は顔を引きつらせながら閉口した。

そんな俺の言葉に驚いた部長が、ツバを飛ばしながら声を荒げる。


「ま、また、物騒なことをっ。お前はなぁ、自分の立場ってものを分かっているのかっ」

それに後輩も加わって俺を責めたてた。


「そうですよ、いつも思いますけど言葉が過ぎますよ!」


憤慨する2人を気にせず話を続ける。


「部長、俺抜けたら困りますよね?」

「何をまた傲慢なことを、お前はもっと謙虚にだな。ほら阿部くんを見習って、初心に返るべきだ」

そう言って、初心過ぎてメスを握る手が震える後輩の肩をぽんぽん叩いた。


「部長、真面目に」

今まで目もくれなかったが、真剣に部長と顔を合わせ声のトーンを低くして言った。