<side 未結>
「どうしよー、ファスナーが上がらないっ」
全身鏡の前で、ホテルで行われる同窓会用のドレスと格闘していた。
必死に手を背中に回しながら、なんとかファスナーを上げようと試行錯誤するも贅肉がそれを阻む。
「ちょっと太ったんじゃないのー?」
その様子を見ていた真結が茶化すように横やりを入れた。
「もう、見てないで手伝ってよっ」
そう言って助けを求めるも、なかなか手伝おうとしてくれる気配はない。
そんな真結の隣からもう一人、お母さんの登場にほっと胸をなでおろすも、その人物もまたしかり一緒に囃し立て始めた。
「あらー、幸せ太りってやつかしらー?」
「えー誰とー?」
「そんなの決まってるじゃない。ねぇ未結?」
2人のわざとらしい言い方に思わず顔が赤くなる。
「もう、2人ともうるさいっ」
そうあの日そうちゃんに送られて帰って来た日、しゅんちゃんに目撃されてしまったがために、しゅんちゃんのお母さんから私のお母さんへとその話が回ってきたのだ。
しかも一緒に車に乗ってただけっていうならまだしも、あろうことか私とそうちゃんが車内でキスしてたなんて言って広めたもんだから、もう大変。
正直同窓会に行くのが怖かったりする。
……たくっ、キスなんてしてないっての。
しゅんちゃんがするところを邪魔したんでしょうがっ!
と怒りに任せてファスナーを思い切り引き上げると、びりっと布地が切れる音が。
これには2人も静まり返る。
……え、嘘でしょ、嘘でしょ。
友達の結婚式用に、初めてもらったボーナスで買った結構気に入ってたドレスなのにっ。
こんな簡単にファスナー壊れちゃうなんて最悪!
「あららー、これもうダメね。新しいの買いなさい」
お母さんが他人事のように壊れたファスナーを見て言う。
……あぁ、なけなしの貯金を崩すことになるなんて。