暗くなった部屋、眠りにつく前、いつものように彼に背中を向けて同じベッドで横になっていた。

……顔の見えないこの状況なら言える。


「……先生、私途中で見捨てられる位なら、今きっぱり切ってくれた方がいいです」

その言葉に、私の体に乗った腕がぴくっと反応する。


「やっぱり気付いてたか」


その言葉に、うっすら希望として抱いていた否定という期待も打ち砕かれ、疑心が確信へと変わる。

私を誤魔化すことなんてできないと思ったのか、あっさり白状する先生。


少しでも、言葉を濁すような言い方をしてくれればいいのに。

自分ではそれを優しさだと思ってるようだけど、多少は必要だよ。

やっぱり冷たく感じるもの。



「……なぁ、お前はさ、俺のことどう思ってるの?」


しばらく間を置いて先生が口を開いた。

どうしよう、好きだと言ってしまおうか。

でも今更、そんなことを言われてもきっと困らせるだけだ。

あのウサギの言うように、自分で決断できずにグズグズ泣くだけの私にほとほと呆れてるんだろうから。


「先生のことは……、先生のことは、ただ利用してただけですから、罪悪感とか感じないでください」


私を抱えるように乗せられていた片腕がゆっくり離れていく。


「……分かった」

今まで聞いたことのないような悲しげな声に、思わず涙腺が緩みそうになって唇を噛んで耐えた。


その日の夜彼の隣で色々考えた。


今泣いて縋ったら、彼はまた憐れんで一緒にいてくれるだろうか、だとか。

私から彼の体に触れたら、また会ってくれるだろうか、だとか。


ただ一緒にいて欲しいだけなのに。

ただそれだけなのに。


なんで、大切に想ってるって言ってくれたのに……っ

いやだ、今更離れるなんて言わないで。

先生が必要なの……っ。


そんな、泣き叫びたい衝動にかられながら、ただただ涙を流さまいと必死に耐えた。