言われたことを考えながら、病棟の出口へ向かっているとそこには秋山の姿が。
秋山の方も俺に気付いたようで、目を見張りながら声をかけてきた。
「こんなとこでどうしたんですか?」
「お前こそ」
「急患が入院になって送りに来たんですよ」
「あぁ、さっき騒いでた患者か」
「えぇ、ちょっと手こずりました。で、先生はどうして?」
「あぁ、ここの医者に学生時代の同期がいてさ。ちょっと話を聞きに」
そう言うと、ちょっと複雑そうな顔をして聞いてきた。
「もしかして、この前来たオーバードーズの女の子のことでですか?」
「まぁそんなとこだ」
「何かあったんですか?もしかして入院させるんですか?」
「いや、まだそこまでじゃないけど、そうなる可能性は多いにあり得るから、その前に相談したくてな」
「そうですか……」
……どこまで栞に関わろうか、そう悩む前に解決しなくちゃならないことがある。
考え込むのはそれからでいい。
どっちにしても、安生先生がやっていることは放っておけないのだから。
「なぁ、安生先生の外来って何時に終わるの?」
「えっと、まちまちですけど大体午後3時位までかかりますかね」
「悪いんだけど、毎回終わる頃連絡もらえる?」
「え?いいですけど、どうしてですか?」
「そこをあまり詮索しないでもらえると嬉しいんだけど」
頼みごとをしておきながら理由は教えないなんて、申し訳ないと思いながら頭を下げる。
それでも、秋山は何か察してくれたのか何も言わず快諾してくれた。
いつか支えきれなくなって嫌気がさすんじゃないか……。
そう思ってしまった理由は、彼女の本当の気持ちが分からないから。
栞は本当に俺に助けを求めているのか。
野良猫みたいにふらっとうちに来るけど、直接的に泣き付いてきたり甘えてきたことはない。
別に宗佑のかわりでも構わないけど、俺自身のことはどう思っているのか正直不安なのだ。
そして、彼女の気持ちが分からないから、どこまで一緒にいられるか自信がない。