「そんな驚かなくてもいいだろ」

「お、驚きますよ」

「なんで?俺は、お前が思ってるよりずっと大切に想ってるよ」

「そ、そういうこと誰にでも言ってるんでしょうけど……」

この期に及んでまだそんなことを言う奴に、柄にもなく怒鳴った。

「あのなぁ、言っとくけど何とも思ってない相手だったらこんな風に助けたりしないし、一緒に寝てる時点でとっくに手出してるからなっ」

そう言うと、きっと一緒に寝れなくなるだろうから言わなかったけど。


「だからさ、目の前であんなことされると本気で焦るし傷つくんだよ。って、聞いてんのかっ」

洗面台からベッドへ向かう途中の廊下で、しばらくうんともすんとも返答が返ってこないことに焦れて振り向くと、そこには照れたように顔を真っ赤にさせた奴がいた。


「あ、あのそんなこと言われたら……、もう一緒に寝れないじゃないですか」

「だめだ、1人で寝させたら、また何しでかすか分からないからな」

「……明日絶対寝不足だ、大事な仕事があるのに」


大事な仕事。

それは、自分の体に替えても……?


今日の様子を見て、正直もう我慢の限界だ。

俺は栞から大事なものを奪ってでも、守りたいものがある。

もう、こんなこと二度とないように……。