「あ、あの突然来てすいませんでした。やっぱり帰ります」
廊下を出て電話する彼にそう告げると、その横を通り過ぎて玄関へ向かった。
「え?」
「すいません、先生の優しさに甘えて。本当図々しいですよね、憐れみで一回優しくしてもらっただけなのに調子に乗って……」
「ちょ、ちょっと待って」
「本当すいませんでした」
そう言って、玄関を開けた矢先、そこには私の頭一個分目線が上のスタイルの良い美人な女の子がいた。
後ろで、あーあ、という先生の声。
「遼君、誰この子?」
切れ長な二重に、鼻筋の通った高い鼻。そして文句のつけどころのないスタイル。
誰が見ても美人だと言うだろう。
そんな女性が今にも泣きだしそうな顔で私を睨みつけている。
もしかして、とんでもない修羅場に巻き込まれているんじゃ……。
「ねぇ、誰だって聞いてんでしょ?この子がいたから今日私が家に行くの断ったの?」
「あぁ、そうだよ。もうとりあえず中入って。はい、君も」
そう言って、私の手を取ると中へ引き入れられてしまう。
その女性を反対側のソファに座らせ、私は促されるまま彼の隣へ。
私の顔を眉を顰めながら全身観察するように見てから、彼へ恐る恐る尋ねた。
「彼女……?」
「そうだよ」
あっさりそう言ってのけた彼にびっくりして、目を見開いて彼を見つめる。
しかし、そのポーカーフェイスは全く崩れず彼の真意が全く汲み取れない。
一体、この人は何を考えているんだろう……っ