「……昔から思ってたんだけどさ。どうしてこう未結が好きになる奴は無神経でお調子者で、ろくな奴がいないんだろうな」
「む、昔のことでしょっ」
「よくあんな奴好きだったな」
「もう、なんで覚えてるの、忘れてよ」
「忘れらんないって、毎回さ協力してって言われるんだけど。その相手が本当しょうもない奴ばっかで。何で俺じゃないんだって何度思ったことか」
……い、一体この人は何を言い出すんだろう。
私の知る限り、最大のモテ期だったあの中学時代、そんなそうちゃんと私なんかが付き合ったら、女子から総攻撃受けてたわっ。
だから、誰もが認めるあの超綺麗な先輩しか、そうちゃんに手出しできなかったのに。
思わず、むかっ腹が立って
「あの頃、そうちゃんなんか選べる訳ないでしょっ!」
と啖呵を切る。
「なんで、一番近いところにいたじゃん」
だけどけろっとそう言い返されてしまって、自分の置かれていた状況を全く理解していなかったそうちゃんにげんなりする。
こうなったら違う切り口で反論してやる。
「……でもそうちゃん結局、一個上の先輩と付き合ってたじゃん」
「え、なんで知ってんの?」
……知ってるわっ!
そんな風に口論しながら家まで送ってもらった。
こうして中学時代の秘めた思いを今になって言い合えるようになるとは思わなかった。
「そうちゃん、仕事忙しいと思うけど頑張ってね」
「あぁ、未結も」
「あ、あの、また」
思い切って言ったのに、どもってしまってそうちゃんい笑われる。
「そんな顔赤くすんなって」
そう言われて更に顔が熱くなった気がした。
「じゃ、またな」
その言葉を最後に、家の前で車を見送った。
また、があることが嬉しい……。
また疎遠な幼馴染には戻らない。
きっと今度会う時には、あの願いが叶う。
あの澄み切った青空に、想いを込めて白い綿毛を飛ばしたあの日の恋心。
今度こそ叶いますように……。