そうちゃんは何も言わず、車を人通りの少ない路道へ場所を移動してくれた。


「……この前はかばってくれてありがとう」

「だからいいって、俺が勝手にしたことなんだから」

「今日ね、すごく楽しかった。そうちゃんがいつも過ごしてる部屋の掃除したり、そうちゃんの好きな食べ物を思い出しながら買い物したり料理したり」

「うん」

「……でもね、前の彼と別れてすぐにそうちゃんっていうのは、気持ちの整理がつかないというか。そんなに、いきなり切り替えられなくて。……だから電話もできなかった」

「まぁそりゃそうだよな、結婚も考えてた相手だもんな」

「だから、今日ねそうちゃんを前に振った相手だからってあんな態度を取ってた訳じゃないの。そうちゃんが、急にそんな対象になっちゃったから意識し過ぎちゃって……」

「うん」

「……でも、気持ちは確実にそうちゃんに向いてるから。だから、もう少し待って欲しい」

「何年でも待つよ、今までずっと想ってきたんだから」

「ありがとう」


もう夕時、日が暮れる。
心なしかお互いの距離が近い気がする、そうキスの予感。

いやいや、まだダメだよ。早いって。

でももし迫られたら、拒めないかも……。

そうちゃんの大きな手に頬を触られ、うっすら目を閉じようとしたその時、




コンコン

不意に車の窓が鳴った。