「おぉ……」

寝ぼけながら寝室から出てきたそうちゃん。
掃除した部屋を見るなりそう声を漏らした。


「おはよう、そうちゃん」

あれから、ビーフシチューと、そうちゃんの好きなカボチャを潰してこして作ったパンプキンスープと、あと野菜の上にゆで卵を刻んだシーザーサラダを作った。
ビーフシチューは鍋に残して、スープとサラダはタッパーに詰め冷蔵庫へ入れていたところだった。


「冷蔵庫にねご飯作っといたから。あとで温めて食べてね」

「あぁ、どうもありがとう。悪いな、ここまでしてもらって」

「ううん、そうちゃんにはお世話になったもん」

「食べて行くか?」

自然な流れでそう聞いてくれたが、私はここでうんと頷く訳にはいかず静かに首を横に振った。


「ううん」

「……だよな。じゃ、送っていくよ」

その言葉が切なくて胸に刺さる。
決して思わせぶりな行動をしたくなくて、断った訳じゃない。

そう言えればいいのに……。


「バスで帰るから大丈夫」

「そこまで俺に遠慮しなくてもいいだろ?」


……そうちゃんに、こんなやるせない顔をさせているのは、私だ。

これ以上断ることもできず、送ってもらうことにした。





車の中、お互い何も話さなかった。
きっとこのまま家に着いたら、またそうちゃんとは疎遠になる……。

いくら小さい頃からずっと一緒だった幼馴染とはいえ、それはもう過去のもの。

今はもう、私達を繋ぎとめる関係性なんてないんだもの。


時間がたってから、ありがとうなんてやっぱりダメだ……。
やっぱりちゃんと言わないと。


そしてこの家に着くまでの車の中が最後のチャンス。