「でも本当に申し訳ないわー」
頬に手を置いて困ったような表情の佐智子さん。
これでは償い足りないといった様子。
「そうだ、うちの子置いて行くから好きに使って」
「え?」
「え?」
思わず俺と未結の声が重なる。
「そうねーそれがいいわ、そうしてもらいなさいよ。あんた家事たまってるって言ってたじゃない」
なぜか乗気になってそう促す母親。
突然そんなことを言われ、来た時から挙動不審だった未結が更に狼狽えている。
きっと気まずいんだろう、俺と2人きりになるのが。
部屋に入って来てから一度も俺と目を合わせようとしないし。
俺もやっぱり少し気まずい。
何せ、顔を合わせるのはあれ以来だったのだから。
だけど、久しぶりに見た未結は思いのほか元気なようで少し安心した。
まだあいつのことが吹っ切れていなかったらどうしようと思っていたのだ。
それだけでいい。
あいつとさえ別れてくれれば。
たとえ俺が未結に選ばれなくても。