「……どういうことだよ?」
「ちょっとそんな怖い顔しないでよー。西川さんがね、自分達が会いたいって言ってるんだから、わざわざ出向いてもらうのは申し訳ないって言ってくれてね」
「だったら、前もって一言言ってくれよ」
「だって絶対宗祐嫌がるじゃん」
「当たり前だろっ」
「だって、母さんだってさ、息子の一人暮らしどんなもんだか見てみたかったんだもん。こんな機会でもなくちゃ絶対家に入れてくれないでしょう?」
いい年して下唇を突き出して拗ねる母親に呆れ返る。
……あぁ、それが一番の目当てだったのか。
「良かった、コーヒー位あるのね」
人のキッチンを物色し、そう言って湯を沸かし始める。
当然普段使ってるカップだけでは足りず、棚の奥隅に追いやられていた引き出物のカップを出す。
テーブルを挟んで二つあるソファに、片側に佐智子さん、未結、真結ちゃんが座って、もう片側に未結のぽってりお父さんが座る。
そのお父さんの横に大人2人並ぶのはさずがにきつい。
ソファが定員オーバーになってしまっため、昔使っていた座椅子を出してそこに母親が座り、俺はそのお父さんの横に座った。
「どうぞー」
そう言いながら、母親がトレイにのせてきた人数分のコーヒーを配っていく。
1人あぶれた母親に、佐智子さんや女性陣が気を遣って席を空けようとすると、母親が慌てて座椅子を死守するかのようにダメダメとはねのけていた。
そんな押し問答が少し落ち着いたところで、未結のお父さんが申し訳なさそうに頭を下げた。