「先生、私諦めませんから」

「……えっと今の話聞いてた?」

「聞いてましたよ」

「はぁ、これ以上は本当に困るよ。はっきり言うけど君の想いには応えられない。何を血迷ってんだか知らないけどさ、こんなおっさん相手にしてる場合じゃないだろう」

「血迷ってなんかないです。私本当に先生のことが好きなんです」

彼の目を見つめながら真剣に想いを訴えた、しかし彼の目線はすぐに下へ落とされた。


「……それは同情だよ、好意なんかじゃない」

白けたように鼻で笑われ、思いもよらない言葉にすかさず言い返す。


「違いますっ」

「俺はそんな慰めなんていらないよ。悪いけど君の自己満足に付き合ってる暇はないんだ」


……先生はいつも優しい。
私がこうやってしつこく付きまとうようになってから、呆れながらでも本気で拒絶したことはなかった。

だけど今初めて、見たこともない冷たい目と厳しい言葉で突っぱねられた。



「……先生、私何を言われようと諦めませんから」

膝の上に握った拳に力が入る。

たまらず声がふるえて、視界がぼやけた。


「………っ」

自分の気持ちを信じてもらえない悔しさに泣き叫びたくなる。
こみ上げてくるような悲しさは涙となって溢れだした。


「だから私と、もう一度恋愛してみませんか……?」

そう言って、泣き顔に精一杯微笑みをたたえた。