「う、うん」

私は友禅君にされるがままに立ち上がった。


「あいつ……慎也はさ、2年前一目惚れした女の子がいたんだ」

ズキッ…

友禅君もしかして……
私が泣いてた原因知ってるの?
だからそんな話……


「勇気出して、告白して、あっさりOK。相手も好きだったんだ慎也のこと」

「……」

私は黙って友禅君の話を聞いていた。

辛いけど、何故か橋田君の話だから真剣に耳を傾けた。

辛いだけなのにね。


「両想いになった2人はそれはそれはラブラブで、周りも羨ましがる程のラブラブっぷりだった」

「そ、それがどうして……」

どうして別れたのだろう。

友姫さんを見る橋田君はなんだか辛そうだった。

掴みたくても掴めない。

そんな感じ。


「付き合い始めて、丁度1年の時、いきなり友姫は慎也をふった。友姫はそれから姿を消した。誰もふった原因なんて分からない。今になってもね」

「そう……なんですか」

辛かっただろうな。

いきなり大好きな人にフラれて……
しかもその原因が分からなくて……


「それなのにいきなり現れて、やっぱり貴方が良いとか言われても困るよねぇ」

……え?

な、何でそのこと……


「あ、ごめん。俺、見ちゃったんだよね。あの丘で慎也が友姫に抱きつかれてるの」

「え!?」

えぇ!?
な、何で!?
え!?
どこから!?


「あはは♪実はあの時慎也達がくる前からあの丘にいて、慎也達の声が聞こえたから慌てて木陰に隠れて、様子見てたんだ」

み、見られてたの……。
恥ずかしい……。
いや、恥ずかしいことは何もしてないけど。



「惜しかったなぁ、もうちょっと頑張れば慎也は……」

「え?」

友禅君が何か言ったみたいだけど、聞こえなかった。