あとで、考えてみればこの時の私はちょっと鬼気迫るものがあっただろう。
寝不足で血走った目、育児でボサボサの髪、化粧っ気のないくすんだ肌。
そんな状態でエッチを迫る妻。

私の顔を見つめるゼンさんは、驚いた表情だ。
でも、その顔がゆるゆると優しい微笑に変わっていく。

それから、ゼンさんは私の身体を柔らかく抱き締めた。


「バカ、無理すんな」


優しい声が全身に染みてくる。

私は彼の腕の中で焦った。
違う!
そうじゃなくて、今はチャンスなんだってば!
夫婦の愛確認の大チャンス!


「私は大丈夫!ずっと待たせちゃったし、ゼンさんとそういうことしたいと思ってるから!」


「俺は、焦ってないからいいんだよ。そりゃ、おまえとしたいって気持ちは今もあるけど、みなみの育児でろくに眠れてないだろ。おまえの身体に負担をかけたくない」