「ゼンさん、私はどうしても行きたい」


私はやや固い口調で言った。


「みなみにはおばあちゃんに会う権利があります。お義母さんにも孫に会う権利があります」


「そんなに強い言葉を使わなくてもわかってる」


ゼンさんは反論してから、うつむいた。


「おまえのおかげでお袋の顔を見に行けたと思ってる。それはありがたいんだ。でも、秋口に肺炎をやってから、お袋も体力が落ちたらしい。最近あまり具合がよくないという。うっかりみなみを近付けて、何かされたらと思うと……」


「ゼンさん、そんな……」


「言い切れないだろう?誰の判別もつかないんだ、お袋は」


ゼンさんの心配はそういうことなのだ。
もし、お義母さんの精神や感情の状態が悪く、みなみを害するようなことがあったら。
それを懸念していたのだ。

もしそんなことになれば、ゼンさんは後悔してもしきれないし、お義母さんを恨んでしまいかねない。