「提案があるの」
その日、帰ってきたゼンさんに私は言った。
彼はみなみを膝に乗せて遊んでいた。
ゼンさんがみなみの手をつかみ、食べよう口に持っていく。すると、みなみが「あきゃきゃきゃっ」と笑って膝の上で身体をよじる。それをゼンさんが追いかける。
そんな平和な遊びをしている二人。
私は一気に言い切った。
「社長の内祝いの旅行、来週末にしましょう。温泉宿の予約もとれました。みんなで行きましょう」
私の言葉に、ゼンさんが訝しげな顔をする。
彼はわかっているのだ。私は強引に段取りし、人を引っ張っていくタイプじゃない。
慎重に周りと調整を重ね、段取りするタイプだ。
彼は私の強い態度といきなり決まった予定に、やや面食らったようだ。
「社長には、私からご連絡してあります」
私が直接社長に話を通すことはまずない。
ゼンさんは会社で会うし、お互いに遠慮がない分、話が早いからだ。