一色部長……、そうそう、最近忘れてましたけど、この人は私の上司。

ん?
ってことは、ゼンさんも私の復帰をOKしてるってこと?

私の希望を無視して会社の意向を優先?
なんだかちょっと傷つく。


「どちらにしろ、マスコミ部門で求人はかけます。でも、新しくきた人に仕事を教えるにも人がいりますからね」


吉田課長の言うことはもっとも。
私の後任の日笠さんはレアケースだった。入るなり、なんでもこなしてくれた彼。
普通は仕事を覚えてもらって、引き継いでで1ヶ月はかかる。


「お子さんの預け先もあると思いますし、強制ではないんです。いっそ、フルタイムでなくてもいいくらいで。少し検討してもらえますか?」


「はあ」


私は困惑気味に答える。
スプーンが止まってしまっていたため、みなみが「たたったー!!あたー!!」と謎の怒声を上げた。
慌てて、スプーンのおかゆを口まで運んであげる。


「お忙しいところすみませんでした。宜しくお願いします」


みなみの声がスピーカーを通じて聞こえたのだろう。吉田課長は申し訳なさそうな声で言い、電話を切った。