スマホをスピーカーに切り替え、みなみに離乳食を与えつつ会話を試みる。


「梅原さん……あ、ごめんね。一色さんだよね」


吉田課長の声がスマホから聞こえる。


「あ、いいですよー。育休明け復帰の際は、紛らわしいし、皆さん慣れてる梅原で呼んでもらおうかと思ってましたから」


「……その復帰の件でご相談があってね」


「?」


復帰……現時点ではみなみが一歳になってからという話をしてある。保育施設が見つからなければ、さらに半年の延長も会社側にはお願いしてあった。

私たち夫婦が社長と懇意という理由だけでなく、うちの会社は社員の休暇取得が寛容だ。当然、産休育休もしっかり取る社員が多く、育休は最長で子どもが4歳になるまで、短縮勤務は小学校3年生終了時まで利用できる。
これって、一般企業ではなかなかない優遇だ。

吉田課長が言いづらそうに言葉を続けた。


「急で申し訳ないんだけど、4月から復帰ってできないかな?」