「最近、みなみの話ばっかで……なんというか……その……」


ゼンさんは言葉を濁し、そして黙ってしまった。それでも、私を抱く手は緩めない。

あのぅ、ゼンさん。
もしかしますと、これって久々に感じますアレな感情ですか?


「……嫉妬してる?」


私は恐る恐る口にする。

娘に嫉妬しちゃった感じですか?
女房をとられたようなキモチですか?

ゼンさんは、答えなかった。
でも、言葉がなくても充分伝わる。


「ゼンさん……、そんな……えーと……嬉しいです、私」


「もういい、気にするな」


ゼンさんは少しふてくされたような声で言って、もう一度私に絡めた腕に力を込めた。

あ、今、幸せで死にそう……かも。