「帰りの電車でぐずりそうだわ」


美保子さんが戦々恐々といった表情で言う。

わかる、わかる。
出先で泣かなくても、帰り道がいい子とは限らないんだよね。

駅までの道すがらにある緑道で立ち止まり、私はみなみの身体にブランケットをかけなおす。美保子さんは純誠くんの歯固めをおもちゃホルダーで結わえ、ベビーカーのガードに付け直している。


「可愛いですね」


ふと、声をかけられ振り向くと、ワンピースにコート姿の女性がいた。
手には買い物袋、年は私よりいくつか上に見える。


「ありがとうございます」


美保子さんが先に反応した。私も慌てて会釈をする。
子どもがいると、よく女性には声をかけられるけど、こんな若い女性からはめずらしい。