その夜、ゼンさんは本当に早く帰ってきた。
もしかして、定時直後に席を立ったんじゃ……というくらい。
権限をこんなところで発動させちゃダメじゃん、一色部長。


「ただいま!みなみは?」


「今、寝てるよ。先にごはんにしちゃう?」


ゼンさんは頷きつつも、ウズウズしている。
早く初お風呂したいのね。

待ちきれず、リビングのみなみゴロ寝スペースにすすっと近付き、正座してみなみを見下ろしている。


「可愛いな、みなみは」


「美人っていうか、愛嬌で勝負の子になりそうだよね」


私はようやく板についてきたタメ語で、ゼンさんに話しかける。


「私に似ちゃったかなぁ?」


「おまえに似てたら、可愛いだろ?」


さらっと言ったゼンさんを睨む。


「嘘だ~!ゼンさん、私の顔『惜しい』って言ってたもん。『残念』だって」