「怪我しているほうの手を掴むのは、反則じゃないの?」

「お前には関係ないだろっ」

拗ねたように絞り出されたその言葉を吐いて、湊は私から視線をそらす。
私はわざとらしくため息をついて肩をすくめた。

「お姉ちゃんなんでしょ?痛がっているの、私でも分かるよ」

「彩愛を姉貴と思ったことなんかねぇよ!」

すぐそばで、息を呑む音が聞こえた。

ちらりと覗き見た彩愛さんの顔は悲しいのか、

それともほっとしているのか、

よく分からない表情をしていた。

「頭を冷やしたほうがいいよ。今の湊は、なんか、なんかすごく苦しい」

感情だけで動いてズタズタに傷つくのは、とても痛い。

自分も。

そして周りも。

それは随分と長い間そうしていた私が最近気づいたことだ。

「息苦しいよ。すごく」

どうしたら、湊は楽になれるのだろう?

私が知っている方法は、1つしかない。