「うるさい。私はもう運動なんかできないんだからっ!!」

目を覆いたくなるくらい大嫌いな自分が露見する。

「こんな価値のない身体なんて、いらないっ」

醜い感情なんて見たくもないのに、止まらない。

「もうっ、いらない、の!!」

〝泳ぐ〟ことに関して、天賦の才だといわれたこともある。
でも私は自分が天才なんかじゃないことを知っている。
だから、私は昔から人一倍努力してきた。
一日だって努力を惜しんだことはないって言いきれる。
それなのに。

「もう二度と泳げないんだから」

こんな現実、ひどすぎる。

ずっと水泳が好きで、ただ大好きで。
それだけでよかった。
それ以外いらなかった。
水の中じゃなきゃ上手く息ができなくなくなるくらい、私は泳ぐことに飢えていた。

同じ年頃の子が遊んでいる間もずっと練習に明け暮れて体を鍛え続けた。
泳ぐためなら、何だって我慢できた。

水泳が私の人生の〝全て〟だった。

誰にも負けたくなかった。

0.1秒を縮めたくて。

誰よりも速く泳ぎたくて。

それを取り上げられたら、私にはなんの価値もない。
泳ぐこと以外に興味なんかなかった。

私はただ〝泳ぐため〟だけに生きていたのだ。