「夢子さんっ――」



「僕とつきあって下さいっ――」


校舎屋上――。


ときめきの空間――。




「D組の、カズヤ君――だよねぇ――」


夢子は、頬をパッションピンク色に染め、アメリカ旅行の土産でもらった「センスのない」くどい甘さのチョコレートの様な声を選択し、躰を捩らせる――。


くどい――くど過ぎるわ夢子――。




「僕の名前、知っててくれたんだ――」


「だあってぇ、カズヤ君のラブリー視線がぁ、夢子のぉハートをピンポイント爆撃しちゃったから――キュンってなっちゃった――」



くねくねと左右に躰を揺らし、一歩また一歩、カズヤ君に接近する夢子――。




んっ、ちょっと待って――。


これでは、夢子がカズヤ君の名前を知っていた理由の説明になっていないのではないか――。



が、しかぁーし、見た目可愛い夢子が、きゅるんと迫り、仄かにシャンプーの香りを風に漂わせれば、大抵の思春期まっしぐらの男は脳内で髄液を垂らし、「あっははははぁっ――」とエロドーパミンを分泌させ、快楽に溺れて、先の疑問点などすっかり忘れているので、問題はない――。