「あたしを何処かへ連れて行く気か?」
「それが叶うんなら一番苦労は無いんやけどな。
来てはくれへんねんやろ?」
「当たり前だ」
この男……何が言いたい。
あたしは苛々していた。
早く、早く先生達に報告をしなくてはいけないのに……!
「新選組監察、山崎丞や」
「は……?」
「俺の名前や。
己を振り返って屯所に来る気になったら来ぃや」
己を……振り返る?
「察するに、誰かに言われてやっとるんやろ?
己の意志を探せ言うとるんや。
ほな、また縁があれば……な」
山崎はそう言うと闇の中に消えていった。
あたしは暫く山崎が消えた方を見つめていた。
少したった頃、あたしも先生達の元に帰るため夜の闇に姿を消した。
頭の中にはずっと山崎の言葉が巡っていた。
***
「下がって良い」
「はっ……」
先生達に報告をし、あたしは誰も居ない家に戻った。
気付いた頃には先生達に囲まれて刀を持たされていた。