「ママ、シセツってなに?」
それまで黙って私の隣に座って、足をぶらぶらさせていた颯太が尋ねた。
「聞こえてたの……」
「ねえ、なに?」
私は困ってしまった。「カラカラさん」の状態も、これからの彼のことも、幼い颯太には理解できないと思ったが、あまりしつこく聞かれるので、仕方なくこう答えた。
「幸せなところよ……きっと……」
「シセツって、みんな幸せ?」
私ははっとした。施設に入って幸せになるのはみんなではない。「『カラカラさん』以外の」みんな、なのだ……。
気づくと、颯太が笑顔で抱きついてきた。今でも耳に残って離れることがない、こんな言葉を口にして。
「じゃあ、ぼくが大きくなったら、ママをシセツにつれていってあげるよ!」
颯太が……私を……こんなに可愛がっている私を、施設に……入れる?そういう考えが頭をよぎり、私は颯太を抱き締めて、タガがはずれたようにしゃくりあげながら泣いた。
そして、「カラカラさん」を思った。手作りのお弁当を美味しいと食べてくれた、颯太以外のただ一人の男性。涙の中で揚がっていく心は、ただなんとも言えない気持ちを抱えていた。
それまで黙って私の隣に座って、足をぶらぶらさせていた颯太が尋ねた。
「聞こえてたの……」
「ねえ、なに?」
私は困ってしまった。「カラカラさん」の状態も、これからの彼のことも、幼い颯太には理解できないと思ったが、あまりしつこく聞かれるので、仕方なくこう答えた。
「幸せなところよ……きっと……」
「シセツって、みんな幸せ?」
私ははっとした。施設に入って幸せになるのはみんなではない。「『カラカラさん』以外の」みんな、なのだ……。
気づくと、颯太が笑顔で抱きついてきた。今でも耳に残って離れることがない、こんな言葉を口にして。
「じゃあ、ぼくが大きくなったら、ママをシセツにつれていってあげるよ!」
颯太が……私を……こんなに可愛がっている私を、施設に……入れる?そういう考えが頭をよぎり、私は颯太を抱き締めて、タガがはずれたようにしゃくりあげながら泣いた。
そして、「カラカラさん」を思った。手作りのお弁当を美味しいと食べてくれた、颯太以外のただ一人の男性。涙の中で揚がっていく心は、ただなんとも言えない気持ちを抱えていた。