その日の夜。


 『今日、亜美元気なくね?』


 電話越しに心配そうに聞いてきたのは、康太。

 康太は同じクラスで、去年から付き合っている。

 康太としかやっていないし、お腹の中の子は間違いなく康太との子。


 「……」

 今、言うべきなのに、怖くて言えない。

 もし言って、離れていったら、ということばかり考えてしまう。

 実際、私はまだ産むか堕ろすか決められていない。

 康太と話し合って、決めなきゃいけないのに…。


 『…亜美?』

 「あ、ああごめん。何だっけ?」

 『だから、今日お前元気ねーなって話!』

 「元気なんだけど、えっと…」

 『なんかあった?』

 いずれは、言わなきゃいけない。


 今言わなかったら、多分ずっと言えないままになってしまう…。

 「…あのね、」