お父さんの低い声が、シンとしているリビングに響いた。

「…うちは決して裕福じゃない。本音を言うと大学に行かせるのだってやめてほしいくらいだ。中絶にだって金はかかるんだぞ。」

 お父さんは…完全に中絶の方向で話を進めている。

 ただでさえ産みたいなんて言いにくいのに、さらに言いにくい…

 
 「何でちゃんと避妊しようとか考えなかったんだ」

 
 「…本当に、ごめんなさい」

 「相手の両親はこの事知ってるのか?」

 「今日、言うって…」

 「色々話さなくてはならない、相手の自宅の電話番号を教えてくれ」


 お父さんが席を立とうとする。早く言わなくては…

 「…あのっ…!」

 「…なんだ」

 「私…、産みたい…です」