可奈
「まさみ。今日もちゃんと最後まで聞いてくれたね・・・。」


「・・・え?可奈、今、何て言った?」

どうすれば夢から抜け出せるのかを考えていた私の耳に、突然、可奈の声が入ってきました。

可奈
「まさみが今日も、ちゃんと私の話最後まで聞いてくれて、私、嬉しいって言ったの。」


「今日・・・も?」

可奈
「うん。」


「可奈・・・何言って・・・。あ、まさか・・・可奈もあの呪いを受けちゃった・・・の?」

可奈
「・・・。」

可奈は、私の問いかけに答えず、うつ向きました。


「ねぇ、可奈。黙ってないで、ちゃんと答えてよ。ねぇ。」

可奈
「・・・じゃないよ。」


「え?」

可奈
「私・・・じゃないよ。」


「ねぇ、そんな小さい声で話さないで、はっきり言ってよ。可奈もこの世界に閉じ込められちゃったんでしょ?」

可奈
「ううん。違うよ。」


「え・・・。だって・・・。」

私の呆然とした顔を見て、可奈がニコッと笑いました。

そして、可奈の声とは思えないほど低い声で、私に言ったのです・・・。

可奈
「私、可奈じゃないもん。」


「はぁ?もうこんなときにからかわないでよ。どこからどう見たって可奈じゃない。」

しかし、可奈は返事をしません。


「だって・・・。」

私たちは、長い間、沈黙しました。

可奈は、不気味な笑顔をしたまま黙っています。

私は、言い知れない恐怖から、体が固まったまま黙っていました・・・。

それからどれぐらい時間がたった頃でしょうか、可奈が突然口を開いたのです。