「あんたとは違うんだから」

 憮然と、小手毬が言い返す。
 鈴掛は、この廓をしょって立つ花魁だった。
 が、すでに身請けが決まっているのだ。

 きちんと廓側との話も済んでおり、後は来る日に、大手を振って出て行くだけの身だ。
 故に、遊女の稼ぎ時である十五夜も、このようにのんびりしていられるわけである。

 そんな花魁付きの小手毬にしても、禿時代から鈴掛に付いてきた出世株。
 振袖新造とは、次の花魁の座を狙える位置だ。
 散茶などには、通ることのできない出世の道が開けているわけである。

「確かにね」

 ふん、と自虐的ともいえる風に鼻を鳴らし、菫菜は膝を崩した。