少し風が涼しくなってきた色町を、男衆が忙しく行き交っている。
 文を届ける役目なのだろうが、その数はいつもよりも随分多い。

 何せ今日は十五夜。
 お月見の夜である。

 遊郭にとって、というより遊女にとって、この夜は特別だ。