これは酷、というものか。

…仕方無い。

「姫、今宵はもう休もう。体を冷やしてもいけない」

男が言うと、女は明らかに安堵した風に

「はい…!」

と頷く。

その花のような笑顔に、絶対に守りきってみせようと心が奮い立たされた。

「どこか雨風を凌げる所は…」

辺りを見回すと、ちょうどやけに大きい蔵が立っていた。

こんな所に人が住んでいるそっと戸を開けるが、中には人どころか物1つ無い。

暗くがらんとした空間が広がっていた。

「ちょうどいい。姫よ、そちらに入っていてくれ」

男が言うと姫は、はてと首をかしげた。

「貴方は入らないの?」