暗い夜道をひたすら走る。

足に掛かるのは二人分の体重。

かなり辛いが、相手は深窓の令嬢なのだ。

無理はさせられない。

さらさらという音に少し遠くを見ると、川が流れている。

「芥川…か」

もうここまで来たか、という思いと、まだここまでなのか、という絶望。

愛しい人はどこか呑気に

「あら、あれは何?白玉かしら」

などと言っている。

ちらと一瞥したが明らかにただの夜露。

ああそうか、ずっと家に籠らされていたから夜露も知らないのか。

可哀想な人だ。

追手を撒けた暁には、二人でどこまででも行こう。

俺がなんでも教えてやる。