外にいる男に

「…ようこそおいで下さいました。

今宵は何のお話をして下さるの?」

と返事をする。

男は、滅多に外に出ることができない姫とは違う。

従者は付くものの、自由に外に出て、馬を駆れるのだ。

そんな男が逢瀬の度に話してくれる、戸外の世界の話が嬉しかった。

姫が知る外の世界は、男の話と造られた物語が全てだった。

その為、男との会話は単純に面白いと思っていた。

今回もそんな他愛ない会合かと思ったのだが。

突如、蔀がガタガタと揺れた。

男が外から揺さぶっているのだ。

「……え?…あの、」

いつもはこんな事……なさらないのに。