「あれ?この香り……」

彼の手が一瞬止まる、


「どうしたの?」


「いや、なんでもない。」


気がついたのかな?

あの香り、

まだ高校生だった私が、

あちこちのお店を渡り歩いて探した香水。

あの頃は手が出なくて、

バイトしてやっと手に入れた。

記憶を頼りに買ったから、

違うんじゃないと思ったけど、

やっぱり正解だったんだ。


ねえ、亨ちゃん気がついてよ、

私がこんなにいい女に育ったこと、

この香りをまとってもおかしくない女性になったでしょ?

ねえ、亨ちゃん私を見てよ。


でも、それからなんか押し黙ったまま、

亨ちゃんは帰ってしまった。