「花音!」

ギュッと抱きしめられて
苦しくてじたばたする私を
さらに羽交い絞めにする。

嬉しいけど、悔しくて、

嬉しいけど、負けたみたいで、

嬉しいけど……


紅潮する顔、

早打ちする心臓の音。

いつだってそうだった。

陸は私を思い通りに扱う術を知っていたっけ。

出会った時からずっと、

私の思い通りになんかなったことなかった。

「痛い……よ、腕離して。逃げないから。」

力を抜いた瞬間するりと腕が外され、

ちょっと太くて短い指が、

私の頬をなぞる。



「花音。

 愛してるんだ。」

「馬鹿、遅いよ。

 待ってたのにずっと。」

「うん。」

「陸。
 もう離さないで」

うん。と頷きながら

さっき掴んだ手首を優しくなでる。

「ごめん。痕付いた。」

「くすっ、なんか手錠見たい。」

自分で言っておいて妙におかしくて笑ってしまった。