「別れ話?何が?」

さっきまで三角だった目が、びっくり目になった。

「何がって、そうじゃないの?
もう潮時って!」

「は?……何それ?」

「別れる時の常とう文句でしょ?」

「は……ははっははっ。」


「笑うなんて酷い」

「違う違う、それお前勘違いだ。」

はははっ

と笑い続ける奴に

私はグーを振り上げた。

「何笑ってんのよ!

馬鹿っ馬鹿男っ
ふざけんなっ!」

振り上げたその手は、
ヤツに届くことは無く、

ギュウっと掴まれた。

「離せっ離せってばばかっ!
大人しく殴られなさいよっ」

「やなこった。」

そのまま腕を引かれて落とされた彼の胸。

「殴りたいなら殴ればいい。けど、離すもんか。

 たとえお前が俺を嫌いでも、
 離してやるつもりは無いんだよ俺は。」


大好きだった彼の胸の厚みが
いつものように包み込む。

あったかいぬくもりは、
私の涙を誘
昨日までの置き場のないあたしの心を
優しく撫で上げて行く。