「と、クラスの女子が言ってたぞ」 
 

彼女は相変わらず目を落としたまま、つまらなそうに言う。

感情をまじえず、事実をそのまま伝達するような口ぶりで。
 

目の前のわたぐもの空から視線を下ろすと、ベンチに寝そべったり、だらしなく寄りかかったりしながら談笑する彼らの姿が見える。
 
その周囲には、いつものように派手な女の子たちが群れていた。

まるで限りある花蜜を奪い合う蝶みたいだ。


「高槻くんは、違うよ」
 

やっぱり女の子に囲まれてるけれど、楽しそうな様子もないし、どこか上の空に見える。

ほかの浮ついた男子たちとは比べ物にならないくらい、誠実なのだ。


「わたし、彼と話したことないわけじゃ、ないし」
 

めずらしく興味を引かれたのか、朝子が目だけを動かしてこちらを見る。


「このあいだ、拾ってもらったの」